Blendrで簡単アニメーション
カテゴリー:Blender
前回の投稿でBlenderのインストールから日本語化まで一通り済みましたので、早速何か作ってみましょう。「Blenderって面白いな!」って思えるものがいいですよね?Blenderで最も面白い事といえば「自分で作ったものが自分の思い通りに動く!」という事だと思います。初めて自分で作ったものが動いた時の感動は忘れ難いものです。ただ、ちゃんとしたものを制作して動かすという事は本来かなり手間のかかる事なので、動かす前に挫折してしまうかもしれません(多くの方が挫折する理由はこれだと思います)。という事で、このチュートリアルでは「超短時間で自分の作ったものが動く!」というコンセプトで、凝ったものを作らずできるだけ少ない工程でモデリングからアニメーションまでを解説していきます。まずは感動を味わい、Blender習得へのモチベーションを高めていきましょう。
学生時代に教科書の端に描いて遊んだ棒人間。シンプルな線で簡単に扱える彼は、様々な動きを試す最も身近なキャラクターです。「超短時間で」というコンセプトに則って進めるため、このチュートリアルでは棒人間を制作し、動かすまでの手順を解説していきます。※以下の流れは「棒人間を作って動かす」事に特化した内容です。ツールの使い方や基本的な操作などは他に詳しく紹介されている方がいらっしゃるので割愛させて頂きます。またショートカットはMacの場合のものを載せていますので、キーボードボタンがWindowsと違う部分があります(コマンドキーなど)。Windowsをお使いの方はそれぞれWindowsのキーに置き換えて頂けたらと思います。
棒人間を作る
1.立方体からボディを作る
「X」キーを押して最初から表示されている正方形を削除します。
- 削除
-
- X
キーボードの「shift」を押しながら「A」を押します(以下ショートカットは「shift+A」と表記します)。「追加」というウインドウが出てきますので、「メッシュ」→「立方体」で新たに立方体を制作します。「shift+A」ショートカットは新規オブジェクトを作成する時に使うショートカットです。立方体以外に球体や平面なども作成できます。よく使うので覚えておきましょう。
- 新規オブジェクトを作成
-
- shift
- A
画面左下を見て下さい。「オブジェクトモード」と書かれたボタンがあると思います。「オブジェクトモード」はその名の通り3D平面上でオブジェクトそのものを動かすモードです。今からこの立方体を人形に編集していきますので「tab」キーを押して「編集モード」に入ります。「tab」キーを押す度に「オブジェクトモード」と「編集モード」の切り替えができます。
- オブジェクトモード/編集モード切り替え
-
- tab
左下の表示が「編集モード」に変わり、立方体の色がオレンジに変わりました。選択状態にある面がオレンジ色で表示されます。オブジェクトが遠くにあるので作業し易いように少し近づけてみましょう。マウスのセンターボタンを前後に回転させてください。視点がオブジェクトに近づいたり離れたりすると思います。このようにマウスセンターボタンの回転で視点を前後させる事ができます。
- 視点の前後移動
-
視点を近づけた事で立方体の表示が大きくなり、見やすくなりましたね。
次にマウスセンターボタンを押しながら画面をドラッグしてください。オブジェクトを中心に視点を動かせます。X軸(3D平面上の赤いライン)が横方向を向く位置に視点を移動させてください。
- 視点の移動
-
現在立方体の表示にパースがついていますので、モデリングし易いようにテンキーの「5」を押して平行投影にします。パースが付かない平行投影モードになりました。
- 平行投影
-
- 5
「control+R」を押してください。
この機能はループカットという機能で、選択したオブジェクトを1周するラインで面を分割することができます。カーソルを立方体上で少し動かしてみてください。ラインの向きが縦横変わると思います。立方体のどちらの方向に分割するかを選択します。ここではピンクのラインが縦向きの状態で左クリックします。
- ループカット
-
- control
- R
ピンクのラインがオレンジに変わりました。この状態でカーソルを左右に動かすとオレンジのラインが左右に移動し、分割する位置を選択する事ができます。つまりラインがピンクの状態で縦横の選択を、オレンジの状態で位置の選択ができるわけです。通常であれば、任意の位置で左クリックして決定するのですが、ここでは左右中央で分割したいので右クリックで決定します。(ループカット使用時に、縦か横か決定した後に右クリックするとちょうど中間地点で分割できます)
立方体の左右中央にラインが引かれ、面が分割されました。ここからは左右対称に制作するために画面右側だけを作って、左側はミラー反転させます。
画面左側の面を全部選択してください。視点を動かして立方体下部や背面など、隠れた面を選択する事も忘れないで下さい。
「X」キーを押し、削除メニューから「面」を左クリックで選択します。
画面右側のスパナの形をしたアイコンをクリックし、「追加」から「ミラー」を選択します。
画面右側の形状が反対側にコピーされました。この立方体をボディにして腕を伸ばしていきたいので、ループカットを使って上下中央よりやや上で面を分割します。
2.面を押し出して腕を作る
面を選択するためには画面下部中央の「面選択」ボタンをクリックします。右側面の面を選択して「E」キーで押し出します。
- 面の押し出し
-
- E
ちなみに左から「頂点」「辺」「面」です。頂点を動かしたい時は「頂点」を、辺を動かしたい時は「辺」のボタンを押してから画面上のオブジェクトを選択します。
続けて「E」キーを押して、今度は肘を伸ばします。同様に前腕、手と伸ばしていきます。
腕が随分太いので、適度な細さにしていきます。まず「A」キーで全ての面を選択します。
- 全選択/選択解除
-
- A
テンキーの「3」でサイドビューに切り替えます。画面が真横から見た図に変わるので、幅の調節が行いやすくなります。
- サイドビュー
-
- 3
「S」を押して次に「Y」を押します。「S」は拡大縮小のショートカットですが、今回は全体的に小さくしたいのではなく、Y方向の幅だけを縮小したいので、「S」の後に続けて「Y」キーを押す事で拡大縮小の方向をY軸に限定させます(上下に拡大縮小させたい時は「Z」を、左右に拡大縮小したい時は「X」を押す事で軸を固定できます)。そのままカーソルを動かすとY方向の幅が細くなっていきますので、適度な幅になったら左クリックで決定します。
- 拡大縮小
-
- S
視点を動かしてみてください。程よい幅になりましたね。
3.面を押し出して脚と頭部を作る
今度はループカットで縦に面を分割します。
下部右側の面を選択し、腕の時と同じように「E」キーを押して、上腿部、膝、下腿部、足部とバランスを見ながら伸ばしていきます。画面左側はミラーコピーされていますので、右側の形状を編集していくと、左側も同じように変形されていきます。
次に首となる面を選択して「E」キーで上に伸ばします。そのまま続けて「E」キーで顔部分を伸ばしていきます。
4.全体のバランスを整える
だいぶ人間らしい形状になってきました。足が貧相なので、足下の前面部分を選択して「E」キーで押し出し、つま先を作りましょう。
次に胴体にループカットで2本ラインを入れます。胴がかなり短いので、上に伸ばしていきたいと思います。
選択モードを赤で囲んだ「頂点選択」に変更します。さらにその隣の「陰面処理」ボタンをクリックします。「陰面処理」ボタンを押す事で前の面に隠れて見えなかった面が透けて見えるようになりました。「A」ボタンで現在選択されている面を解除した後「B」ボタンを押し、頭部の左上から手の先まで、斜めにドラッグして上体を範囲選択します。
- 範囲選択
-
- B
キーボードの「G」を押した後「Z」を押し、カーソルを上に動かす事で選択した全ての面が上に移動します。「G」は移動のショートカットで、「Z」で移動をZ軸限定にする事で、まっすぐ上方向に移動させる事ができます(拡大縮小の時と同じく左右に移動したい時は「X」を、前後に移動させたい時は「Y」を押す事で軸を固定できます)。
- 移動
-
- G
ウエストをシェイプするために、さらに胴体をループカットで2分割します。
頂点を動かしてウエストにくびれを作ります。気になる部分があれば頂点を動かして全体のバランスを整えていきます。
全体の形状が決まったら「オブジェクトモード」に戻ります。
棒人間に骨格を組み込む
1.アーマチュアを作成し、骨格を組み上げる
右側のアイコンから❶立方体のマークを選択し❷「ワイヤーフレーム」と「すべての辺を表示」にチェックを入れます。この2つにチェックを入れる事で、オブジェクトモードでも棒人間の構造が確認できるので、ボーンを組みやすくなります。❸「shift+A」で「追加」ウインドウの「アーマチュア」「単一ボーン」を選択します。
右側のアイコンから❶人形のマークを選択し❷「レントゲン」にチェックを入れます。棒人間の体が透過されて先ほど追加したボーンが見えるようになりました。
ボーンを選択した状態で「編集モード」に移ります。ボーンの上部を選択し、「E」キーを押した後「Z」キーで方向を限定し、首の付け根あたりまで伸ばします。
さらに「E」→「Z」で今度は頭の先まで伸ばします。
今度は最初に追加したボーンの下側を選択し、股の付け根あたりまで伸ばします。
左側タブの「オプション」から「Xミラー」にチェックを入れます。
先ほどXミラーにチェックを入れた事で、「shift+E」で左右対称にボーンを伸ばす事ができるようになりました。脚の付け根あたりまで伸ばしましょう。
- ボーンを左右対称に伸ばす(Xミラーにチェックを入れた場合)
-
- shift
- E
下に向かってボーンを伸ばし、添付のように脚のボーンを組みます。
同様に「shift+E」で手の部分も組んでいきます。
全部終わるとこんな感じになっているはずです。
次に上記4箇所のボーンを選択し「X」キーで削除します。
2.アーマチュアと棒人間を紐づける
アーマチュアが完成したら「オブジェクトモード」に移り、右側上部ウインドウの「立方体」をクリックし、次に「アーマチュア」をクリックします。(順番が大切なので間違えないようにしてください)
「control+P」で「ペアレント対象」ウインドウの「自動のウエイトで」を選択します。これで骨格(以下アーマチュアと記載)とモデルが紐づけされました。先ほど「立方体」を選択した後に「アーマチュア」を選択しましたが、最後に選択したオブジェクトが、最初に選択したオブジェクトの親となります。つまりアーマチュアが親、棒人間のモデルが子となり、親であるアーマチュアを動かすことで子であるモデルも追従して動くようになります。
- ペアレント化
-
- control
- P
3.棒人間のポーズを変える
上記までの作業でモデルを自由に動かすことができるようになったので、早速ポーズを付けてみましょう。「オブジェクトモード」でボーンを選択した状態で「control+tab」を押すと「ポーズモード」に入ります。「ポーズモード」では先ほど作成した骨格を回転させたり動かしたりする事で棒人形にポーズを付ける事ができます。
- オブジェクトモード/ポーズモードの切り替え
-
- control
- tab
画面下部のカーソルマーク隣にある円弧のマークをshiftを押しながらクリックします。このボタンをONにすると、画面上のオブジェクトやボーンをドラッグして回転させる事ができるようになります。次にその隣にある「グローバル」と書かれたボタンをクリックし「ローカル」に変更します。「グローバル」はこのシーン全体の座標軸で、「ローカル」は棒人形のみの座標軸になります。
下部中央にある赤い●マークをクリックします。このボタンを押す事で、今から付けるポーズを自動で登録してくれるようになります。アイコンの通り録画ボタンのようなイメージですね。
下部タイムラインウインドウを見て下さい。緑色の線が現在表示されているフレームです。緑の線が「1」のところにあるか確認してください。(何も触っていなければ1になっていると思います)
その後「A」キーでボーンを全選択します。
「I」キーを押して「キーフレーム挿入メニュー」から「回転」を選びます。これで1フレーム目に現在の棒人形のポーズが記録されました。ここで「回転」を選択したのは、この後棒人形の各関節を回転させてポーズを付けていくためです。
- キーフレームの挿入
-
- I
タイムラインの緑の線を「30」の位置に動かします。タイムラインの30のあたりで左クリックしてください。Blenderのデフォルトのフレームレートは24なので、30フレームは約1秒ちょっとの位置です。
棒人形の骨格(以下ボーン)を選択すると、XYZ軸上にそれぞれ赤、緑、青の円弧が表示されます。その円弧の上で左クリックしながらドラッグすると、それぞれのボーンを動かす事ができます。各関節を自由に回転させて好きなポーズをとらせてください。
これで1フレーム目の直立状態から30フレーム目のポーズまで、約1秒ちょっとの動きが完成しました。タイムラインの緑の線を1フレームに移動させましょう。
棒人間を動かす
「alt+A」を押してみてください。タイムラインの緑の線が右に動いていくと同時に棒人間のポーズが変化していくのがわかるはずです。このように、キーフレームとキーフレームの間は自動で補完されます。複数のキーフレームを作成する事で複雑な動きを付けることもできます。
- アニメーションのプレビュー
-
- alt
- A
セットを作って棒人間をかっこ良く見せる
せっかくなので、棒人間がかっこ良く見えるセットを組んでレンダリングまでしてみましょう。「control+tab」キーを押して「ポーズモード」から「オブジェクトモード」に戻ります。これからライトの位置を動かすので、棒人間の「ローカル」座標からシーン全体の座標軸である「グローバル」座標に変更します。これで座標軸が棒人間からシーン全体の座標軸に戻りました。
テンキーの「7」を押して視点をトップビューに切り替えます。画面が真上から見た図に変わるので、シーン上のライトを選択し「G」キーで棒人間の前あたりに移動させます。
- トップビュー
-
- 7
カメラマンになったつもりで視点を棒人間ができるだけかっこ良く見える位置に移動してください。少しややこしいのですが「今見えている画面の表示=カメラを通して見た図」ではないので、現在の視点にカメラを合わせないといけません。「alt+control+0」を押してください。このショートカットで現在の視点をカメラビューにする事ができます。
- 現在の視点をカメラビューに
-
- alt
- control
- 0
カメラの位置を決めたら「F12」を押してください。レンダリングが始まります。
- レンダリング
-
- F12
グレーの背景にグレーの棒人間…パッとしませんね。取り急ぎ地面を置いてみましょう。多少良く見えるかもしれません。「F11」を押す事でレンダリング画面から元の画面に戻る事ができます。
- レンダリング画像の表示/非表示
-
- F11
「shift+A」で「平面」を追加します。「G」→「Z」で作成した平面を足下に移動させ、「S」キーを押して平面を全体的に広げましょう。再度「F12」を押してレンダリングします。
奥行きは出ましたが、全体的に暗いので、棒人間に色を付けたいですね。
右側アイコン欄の中の丸いアイコンを選択し、「新規」をクリックします。
「ディフューズ」の下の白いところをクリックして、好きな色に変更します。再び「F12」でレンダリング…
もうちょいライトを明るくしたいので、ライトを選択した状態で、右側アイコン欄の中のランプアイコンをクリックして「エネルギー」を5くらいに上げます。
次に右側アイコン群の中の地球儀のようなマークを選択し、「アンビエントオクルーション」にチェックを入れます。「アンビエントオクルージョン」にチェックを入れる事で光が遮られた部分の影は暗く、開かれた部分の影は明るくなり、擬似的にリアルな影を作り出します。手軽にリアルなイメージにしてくれるので、最初のうちはとりあえずオンにしておきましょう。「F12」でレンダリングしてみます。
それなりに見えるようになったので、このあたりで良しとします。
棒人間の動きを動画として書き出す
最後にアニメーションを書き出します。右側アイコン欄の左端、カメラのアイコンを選択し、「出力」右横のアイコンをクリックして動画データの保存先を選択します。次にその下の「PNG」をクリックして「H.264」に変更し、「エンコーディング」の「フォーマット」を「MPEG-4」に変更します。
「アニメーション」ボタンをクリックするとアニメーションのレンダリングが始まります。先ほど指定した保存先にMP4データが作成されているはずですので再生してみましょう。
自分のイメージ通りに棒人間は動いたでしょうか?自分の作ったキャラクターが動くって面白いですよね。このチュートリアルでは「超短時間で動かす」事に特化して説明しているので、所々で「なぜそうなるの?」というところが沢山あるかと思います。今回棒人間を作ってみて「面白いな」と感じてもらえたら、「なぜそうなるの?」と思った事を調べてみてください。Web上でBlenderユーザーさんたちが様々な情報を提供してくれています。1つ1つ疑問を解決していけば、やたらとボタンが沢山あって難しそうに思えたBlenderも、気付いた頃には楽しいツールになっていると思います。
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